バイオダイナミック農法とは?

バイオダイナミック農法は、ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した一連の考え方に基づく農法です。技術体系というより思想に近いもので、その本質は、宇宙を含む自然の全てと調和する農業です。

方位磁石で方角を見るとき、私たちは、手元の磁石が北を指し示す力が、磁石自体のみならず地球全体の磁場によるものであることを知っています。それと同じように、この地球上で生命誕生以来、長い年月をかけて進化してきた動植物の暮らしが、地球や、太陽、月をはじめとする宇宙の天体の働きと密接に関わっていることは言うまでもありません。

私たち人間の精神活動が、科学による物質的な理解のみで説明できないことと同様に、自然の中のあらゆる生命とその働きは、近代農業における知的理解で捉えられるようなものではなく、まして制御することはできません。物質的な事象は結果であり、その本質はあくまでも宇宙の一部である生命の活動にあります。

昨今の自然科学が説明するように、地球上では物質や水、エネルギーが循環し、生命が連環しています。ひとつの生命体ともいえる地球上の、あらゆる活動のつながりの上に、本来の農業もまた成立していました。

近代農業が発達し、私たち人間が、化学肥料を撒いて効率的に収量を増やしたり、農薬や遺伝子組み換え技術によって植物から病気や虫を排除したりしてきた結果、今や大地は疲弊してしまっています。健全な大地に根ざす生命や物質の循環を止めてしまうということは、人間や農業のみならず、この地球の生命を脅かすことに他なりません。

シュタイナーは、亡くなる前年の1924年に農業者を集めて行った連続8回の講演の中で、バイオダイナミック農法のベースとなる考え方を提案しました。彼の没後、彼とともに働いた仲間や弟子などが中心となってその実践を重ね、今日のバイオダイナミック農法が確立されています。

農法といっても、その本質は具体的な手法よりも理念にあり、シュタイナーの提唱をもとに、その土地や気候などに合わせて実践されています。ですから、バイオダイナミック農場の数だけ、それぞれのバイオダイナミック農法があると言ってよいでしょう。

また、バイオダイナミック農法は、フランス語ではビオディナミといい、この農法に則って造られたワインはビオディナミ・ワインと呼ばれます。それは最も厳格な自然派ワインであり、自然と調和する理念と、テロワール(その土地の風土)を色濃く表現する味わいによって、多くのファンに愛されています。

バイオダイナミック農法では、生きた窒素の循環を基本とし、宇宙との調和をもたらすために、天体の動きに合わせて農作業の日取りを決める「種まきカレンダー」や、自然のものから作る「調合剤」といわれる調剤を用います。

調合剤については、古くから存在する基本の9種類以外にも、今では様々な研究機関、バイオダイナミック農場などで、新たな調合剤が作られ、実践され、その効果も調査されています。また撹拌の方法も、樽の中の水を機械仕掛けの棒によってかき混ぜる自動撹拌器、水を無限大の形に動かし活性化させるフローフォームの開発もあり、海外の大規模バイオダイナミック農場では多く使われています。

持続可能な未来につながるシュタイナーの理念

ルドルフ・シュタイナーは哲学者であり、自然科学を第一とする研究者ではありません。シュタイナーは彼独自の世界観、人間観に基づく思想とその実践を人智学(アントロポゾフィー)と呼び、その理念は医療や経済、芸術など多様な分野に及びます。現代においても特に注目されているのが教育分野。人間が本来持っている能力を成熟させ、自分自身でものごとを正しく捉え、感じ、行える人間を育てるシュタイナー教育は、日本でも多くのフリースクールなどの基本理念となっています。

シュタイナーが100年前に提唱した理念は、循環型社会や多様性の理解といった、今日の国際社会が理想として掲げる持続可能な未来の姿につながっているのです。

種まきカレンダー

古代からの叡智によって、12星座にはたらく力に4つの要素(水、熱、土、光)があるとされ、実際の惑星、特に月が、どの星座の前に位置しているかによって、その元素の働きを知ります。そしてその要素によって、その日にどんな作業が適しているかが分かるようになっています。
12の星座は、それぞれ以下のように分けられます。それぞれの要素は植物の4つの部分(根、葉、実、花)にも司っている事が、長年の研究の結果(主にマリアトウーンの研究による)から分かっており、種まきカレンダーはその考えのもとに作られていて、何がその日の作業に適切かを見ることができます。また更に、4要素は、惑星にも対応しているので、それも入れた一覧表をご覧ください。
それ以外にも月の軌道が下がるときは、大地の中へエネルギーが向かうので、土の中に根をはる種まきや定植に適しています。反対に月の軌道が上がる時期は、植物が上へとのび、エネルギーが上部に登っていく時期なので、接ぎ木を切るのによく、花の香りもよく、また果実などを収穫するとその持ちがよいと言われています。定植適期とカレンダーに示してあります。
(https://www.natural-coco.jp/life/etc/2008/05/bio5.html より転載)

種まきカレンダー

水の星座 月、火星、海王星 蟹座、蠍座、魚座
熱の星座 水星、土星、冥王星 牡羊座、獅子座(獅子座は特に実と種に影響します)、射手座
土の星座 太陽、地球 牡牛座、乙女座、山羊座
光の星座 金星、木星、天王星 双子座、天秤座、水瓶座

調合剤について

調合剤は、牛の糞、水晶、ノコギリソウ、カモミール、イラクサ、樫の木の皮、タンポポ、カノコソウ、スギナ等から作られ、全部で9種類あります。それぞれは、宇宙にある惑星(土星、木星、金星など)惑星や、人間の内蔵の臓器(肝臓、腎臓、膵臓など)に対応し、惑星や内蔵の1つが欠けても全体のバランスがとれないのと同じように、9つの調合剤のホメオパシー的な(微量な)力を大地に入れる事により、宇宙の調和が大地にもたらされ、本来の健康で生命力に満ちた大地にします。

500番 牛糞牛角調合剤

材料:雌牛の角、健康で新鮮な雌牛の糞

  • 根の形成に助け、土の活動を高める。
  • 細菌、微生物、地中の虫などの繁殖を助ける。
  • 肥沃さを増し、繁殖を増す。
  • 冬の力を運び、新鮮にし、露の沈殿を増す。
  • 樹液の循環を刺激する。

501番 水晶牛角調合剤

材料:雌牛の角、水晶または石英、長石

  • 植物の光新陳代謝を増強。
  • 光合成と葉緑素の構成を刺激。
  • 作物の色づき、芳香、風味をよくする。
  • 作物の品質と栄養価を保つ。
  • 病気や害虫に対する抵抗力を高める。
  • 太陽と関係する。

502番 ノコギリソウ調合剤

材料:ノコギリソウの花、オス鹿の膀胱

  • 大地に活力を与え、元気づける
  • 植物の内に残っている諸々の物質に対して正しい割合で硫黄をもたらすのを助ける
  • 硫黄やカリウムを植物が利用するのを促す
  • 必要な微量要素の吸収を可能にする。
  • 金星と関係をもつ

503番 カモミール調合剤

材料:カモミールの花、雌牛の小腸

  • カルシウムと硫黄との関係をもつ
  • 土の中の窒素を安定させる
  • 植物の成長を刺激する土の生命を増加させる。
  • 植物がシリカとカリウムの間の正しい関係を見つけることを助ける
  • 土が大気、宇宙環境から正しい量のシリカを取り入れることができるようにする
  • 水星と関係をもつ

504番 イラクサ調合剤

材料:イラクサ

  • 硫黄との関係をもつ
  • カルシウムと鉄を刺激する
  • 土を健康にし、植物が必要とする栄養要素を土が供給できるよう刺激する
  • 大地を快活にする
  • 堆肥から窒素分が蒸発するのを防ぐ
  • 火星と関係をもつ

505番 カシの木調合剤

材料:牛の頭蓋骨、カシの樹皮

  • カルシウムとの関係をもつ
  • 有害な植物の病気と闘う力(あるいは特質)をもたらす
  • 治癒力を供給する
  • 非常に活性化したカルシウムを含んでいる
  • 月の諸力の影響をおさえる
  • 月と関係を持つ

506番 タンポポ調合剤

材料:タンポポの花、牛の腸間膜

  • ケイ酸またはケイ素、およびカリウムとの関係を促進する
  • ケイ素が土に宇宙の力を引きつけることが出来るようにケイ素とカリウムの関係を刺激する
  • 木星と関係をもつ

507番 カノコソウ調合剤

材料:カノコソウの花

  • 土に対してリン酸分の調整機能を向上させる
  • 堆肥に対して協力な活性化作用をもつ
  • 堆肥の発酵を助ける
  • 霜、寒さから植物を守る
  • 土星との関係をもつ

508番 スギナ調合剤

材料:スギナ

  • さび病やほかの菌類など真菌類による病気を防ぐ
  • 植物の品質の改良

粘土調合剤

シュタイナーの農業講座の中で少しだけ示唆された調合剤で、粘土調合剤といわれるものがある。粘土は、シリカと石灰との仲介者であり、500番と501番との中間的役割をし、宇宙と大地の宇宙的な力のバランスをとる。

特別500番

オーストラリアの研究家ポドリンスキーによって開発された調合剤。500番調合剤に502番~507番調合剤の力を加えたもので、この特別500番によってオーストラリアで広範囲にバイオダイナミック農業が普及したといわれています。

マリア・トゥーンの樽堆肥(BC)

ドイツのバイオダイナミック農業研究家マリア・トゥーン女史の研究により、大地に堆肥を通して入れる502番〜507番までの調合剤が入った樽堆肥(つまり太陽銀河系の主要な惑星の影響を大地に及ぼすことができるバランスのとれたもの)を使うことができ、私たちは以前よりずっと簡単にバイオダイナミック農業をはじめることができるようになりました。

これは、特にこれから新しくバイオダイナミック農業に転換する畑などに有用です。樽堆肥は健康な牛の新鮮な牛糞と、卵の殻、玄武岩の粉と502番から507番までの調合剤を使って作られます。

500番は大地に向けて、501番は地上部に向けて、散布されます。どちらも木製、または陶器、金物などの自然素材の樽に雨水、または湧水、川の水などできるだけ自然のきれいな水を使い、樽の中に調合剤を入れ、1時間左回り、右回りと交互に渦巻き状にかき混ぜます。そのことによって調合剤の力を水の中に転写させます。そして、それを500番は散布機、もしくは柄の着いたほうき等で土に向け夕方に散布し、501番は、空中に向けて霧吹きなどの霧状にする散布機で早朝に散布します。
502番〜506番は、直接大地には入れず、堆肥の中に入れ、堆肥にそれぞれの力を発揮させます。508番は菌類などが必要以上にバランスを崩して地上部に上がってこないように、散布します。マリア・トゥーンの樽堆肥は、500番と同じように夕方ダイナミゼーションして散布しますが、撹拌時間は20分です。

私たちは、次世代まで安心して食べられる作物づくり、
安心して暮らせる環境づくりを目指しています。

畑作業や牛のお世話をしながら、
乳製品づくりにも取り組んでいます。
トカプチで、一緒に働きませんか?

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